ネトゲ廃人

ネトゲ廃人』(芦崎治/2009)

雨の日には部屋にこもってゲームという選択肢もあるが、本書が教えるのはネットオンラインゲーム、通称ネトゲに骨の髄までどっぷりはまってしまうことの恐怖だ。最初は趣味として楽しんでいたはずのネトゲが、徐々にその人の体と生活をむしばんでいく様は、公共広告機構ではないが「人間やめますか、ネトゲやめますか」状態。また、ネット上の人間関係も問題になってきて、ネット上ではどうしてもおさまらない恋愛感情が、リアルにはみ出てきて実害を生んだエピソードがいくつも紹介される。  
ただこれはネトゲそのものの危険性なのか、人間の依存性一般に付いてまわる危険性なのか、それは判然としない。今の時代、ギャンブルにハマる人もいればネットに一日中かじりついてしまう人だっている。またケータイ依存というのも聞いたことがある。思春期の女子などは、膨大な量の友人からのいつくるかわからないメールに即座に返信しなければならない切迫感に、常にさらされているという。アドレス帳が20件に満たない評者は安堵で涙がこぼれそうである。
最終的に著者はネトゲそのものを「悪」だとは断定しない。健全に遊べばネトゲは何ら問題ないのだ。また、本書の中では亡くなったある身障者の青年のエピソードも紹介される。彼のようにネットだからこそ知り得た「自由」だってある。ネトゲもなにごとも「中庸」が一番なのだ。けれど、わかっていようとそれができないくらいには、人間の業は深い。 (I.Y)

ネトゲ廃人

ネトゲ廃人