あの子と部屋で観るためのジム・キャリーの三作

 つきあって間もない彼女、もしくはこれからお近づきになりたいと思っている女の子との仲を深めるために、部屋で一緒に映画を観るというのは有効な手段の一つだろう。しかし観る映画のチョイスは重要だ。まさか『ムカデ人間』をみせるわけにもいかない。

 そんな映画のチョイスにお困りな若人に、今回評者がお勧めしたいのはジム・キャリーの三作、『マスク』『ライアーライアー』『ふたりの男とひとりの女』だ。現代の喜劇俳優といえば、誰が思い浮かぶだろうか。ある人にとってはロビン・ウイリアムズ、ある人にとってはウディ・アレンなのかもしれない。笑いのツボは人それぞれだが、評者のツボにドンピシャにハマるのが、このジム・キャリーなのだ。

 ジム・キャリーのコメディの醍醐味といえば、あのケロっとしたチャーミングな顔から繰り出される顔芸であり、この三作でもそれがさく裂している。顔芸というと低レベルの笑いと思う向きもあるだろうが、こういうユルい笑いが女子に有効なときもあるんですよ奥さん!どれも比較的ポピュラーな作品だから、TSU×AYAにはきっと置いてあるだろう。もし置いてなかったら、地元のTSU×AYAを怨んでTO×LETでU×CHIして流さずに帰ってくればよい。

 笑えることもさることながら、「ちょっぴりエロ」が入っているところも見逃せない。ただ単に面白かったなら「あー、おかしかったねー」で終わってしまうところだが、ドン引きするほどではない「ちょっぴりエロ」なシーンがあることでドキドキ感が増すではないか。なんせ部屋にはあなたとその子、二人っきりなんだから。

 ちなみに、こうして三作あげてみるとある共通点が思い浮かぶ。どの作品においても一人の男が両立しえない二面性のはざまでもがき苦しみ、その様が映画の面白さの主成分にもなっているということだ。いわずと知れた『マスク』は冴えないバンカーがある不思議なマスクを手に入れたことで、普段の彼とは似ても似つかない超絶ハイテンションな超人に変身するというストーリーだ。さらに『ライアーライアー』はライアー(嘘つき)のロウアー(弁護士)が、離婚で離ればなれになった息子のかけた魔法で本音しか口にできなくなる話だし、『ふたりの男と〜』にいたっては戯画化されてはいるものの、まさに二重人格そのものの話だ。

 また、ジム・キャリーのコメディのいいところはなんだかんだ言って最後はハッピーエンドに終わるということ。特に『ライアーライアー』は、それまで嘘がつけなくなったことに苦しんでいた主人公が本音を口にする喜びにふれ、通行人に怪訝な顔をされながらも「I love my son!」と絶叫しながら大通りを走り去っていく姿は、ちょっとばかり感動してしまう。

 ただ、先に書いた通りどの作品も「ちょっぴりエロ」がまぶしてある。なので、一緒に観賞する女の子にそっち方面への耐性があるかも、予め見きわめておく必要があるだろう。あなたが今思い浮かべているあの子は、『ふたりの男と〜』にてジムが幼児と一緒にママの母乳を飲むシーンでドン引きしないだろうか?あるいは、『ライアーライアー』で上司とエッチしたあとに「どうだった?」と聞かれ「うーん、いまいち」と即答する彼に唖然としないだろうか?
 また、反対に「こんなコメディじゃ物足りないよ!」という女の子があらわれるかもしれない。そのときは迷うことなく『ムカデ人間』をチョイスしよう!(今田祐介)