『モテキ』〜珠玉の「Twitter映画」〜

 一年前に空前のモテ期を体験した藤本幸世(森山未來)は、その絶好の機会をふいにしたまま、惨めなセカンド童貞の日々を送っていた。ナタリー編集部への再就職にこぎつけた彼に、Twitterをきっかけに交流をはじめたある「男友だち」とのオフ会をきっかけとして、再びあの季節が訪れようとしていた。。。

 講談社のイブニングにて連載されていた同名タイトルのマンガ、さらにテレビ東京でのドラマで人気を博した『モテキ』の映画化。ストーリーは原作の久保ミツロウが全く新しい続編的内容のストーリーを描きあげ(公式サイト参照のこと)、ドラマ版と同じ大根仁がメガホンをとっている。

 原作やドラマ版同様、細部にまで施される原作者らのサブカル愛にあふれた小粋な演出は、特にサブカル系を自負しているであろう藤本(「B'zはぜんぜん好きじゃない」らしい)と似た境遇にいる者にとってたまらないだろう。また、彼がストーリーの要所要所で聴く80〜90年代JPOPや00年代アイドルソングも必聴。しだいに、彼が次にiPod(らしきもの?)で何を選曲するかが楽しみになってきてしまう。多数盛り込まれたあっと驚くカメオ出演も見逃せない。

 しかし、だからといって本作が、「原作読んでないヤツやドラマ版を観てないトーシローはお断りだねぷぷぷ」という雰囲気をかもす閉鎖的な「サブカル糞野郎映画」かと言えばそうではない。本作で初めて「モテキ」を体験する人でも容易に楽しめるように作られている高品質のラブコメだ。

 童貞にありがちだが、自分を守るために装備した頑強なる自意識によって逆に雁字搦めになっている藤本に、長澤まさみ演じるサブカル系のみゆきや、麻生久美子演じるややメンヘラのはいったアラサーOLるみ子が接近してくる。しかし、藤本の苦悩は終わらない。彼は正真正銘にモテているのに、モテキなのに、なぜだ?

 それもそのはず、モテキという題材にて本作が描いているのは、ある非モテセカンド童貞に突如訪れたグローリーデイズ、などではない。むしろ逆で、何もせずともむこうからやってくる「モテ期」が来ようと、所詮ダメなやつは彼女を作れないしセックスにありつけないという、残酷なる宣告だ。

 そんなストーリーに今日的なツールであるTwitterが、絶妙な形で絡んでくる。約一年前、某局がドラマでTwitterをとりあげドえらいスベり方をしていたのを死んだ魚の目で眺めていた筆者であるが、本作はきわめてレベルの高い「Twitter映画」ともいえる。特にある二つの場面におけるTwitterの使い方がリアルすぎてえげつない。筆者は実体験がフラッシュバックし危うく「ぷにゃああああ」などと奇声を上げながら映画館を飛び出してしまいそうになった。実際は大人しくスクリーンを眺めていたが。

 クライマックスはちょっと強引で、とってつけたように感じる。また作中で一度「ボーイ・ミーツ・ガール的なもの」を嗤いながらも、結局はボーイ・ミーツ・ガールしちゃっていることは否めない。でも、「モテキ」の力であそこまで行けたんです。彼氏のいる人も彼女のいる人も、童貞も童貞じゃない人も、2時間満足できるはずのラブコメディーである。(今田祐介)

監督:大根仁/日本/2011年9月23日より全国公開