パウル・クレー おわらないアトリエ

東京国立近代美術館/2011年5月31日-7月31日

雨の日は家にこもらず「芸術の秋」ならぬ「芸術の雨」なんていうのはいかがだろうか。美術館側もそれを期待してなのか6月に一斉に展示替えが行われ、足を運ぶ価値のありそうな企画展が目白押しなのだ。国立新美術館では「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展 印象派・ポスト印象派 奇跡のコレクション」、森美術館の「フレンチ・ウィンドウ展:デュシャン賞にみるフランス現代美術の最前線」などは王道。東京オペラシティアートギャラリーの「ホンマタカシ ニュー・ドキュメンタリー」展も写真に興味があるならば外せない。少し変わった趣向のものならば、東京都庭園美術館の「森と芸術」展やワタリウム美術館の「驚くべき学びの世界」、三菱一号館美術館の「もてなす悦び ? じゃポニズムのうつわで愉しむお茶会」展なんてのもよさそうだ。器でいくならば、根津美術館の「コレクション展 伊万里・柿衛門・鍋島 ー肥前陶磁の華ー」も合わせて鑑賞してもいいかもしれない。
数ある企画展の中で今回は「パウル・クレー おわらないアトリエ」展について書かせてもらう。偶然にもこの展示会のカタログを執筆した柿沼万里江さんという現役研究者の方の講演を聴くことができたのだ。彼女は主にパウル・クレーの残した両面作品について研究をしている。両面作品とは聞き慣れない用語だと思うが、そもそもクレー自身もそんなジャンルを作った覚えはないはずだ。それもそのはず。この両面作品はクレーがカンヴァスの裏や貼付け合わせた紙の内側に全く異なる作品を描いていたる作品を指す。いわば見られるはずのなかった作品群だ。徹底的に作品を管理してたクレーだからこそ、意図がないということはないだろう。もしかしたら、その解答は今回の展示会の視点である「制作プロセス」の中に隠れているかもしれない。(M.K♀)

パウル・クレーとは編集