つながり進化論
mixiやTwitterの爆発的な普及によって、人と人との「つながり」が変わろうとしている。本書は、つながりのメディアを現在のみならず過去にまで振り返って考察する一冊。構成は三部に分かれ、第一部でコミュニケーションメディアを技術史的に振り返り、第二部ではユーザー側の心情的側面にスポットを当て、第三部はこれからのネットメディアの在り方を考察する。
印象としては、内容にかなりムラがある。第一部ははっきりいって濃い。ケータイの第一世代から第三世代まで電波の使い方の進化や、パソコン通信からインターネットまでの歴史、ドメインやHTLMの仕組みなど、ネット利用者でもその大半が知らないはずのことが語られる。さらにテレビ電話やセカンドライフなどの失敗したサービスまで光を当てる。マニアックなキャプテンまで飛び出し、さすが黎明期からネットをやっていた人というだけありおもしろい。
しかし第二部からの内容は、出てきた言葉で言えばややスイーツ(笑)。膨大な量の情報を即座にやりとりできるようになった現代の若者にとってのネット利用を、プラス面とマイナス面に分けて考察しているのだが、「そりゃそうだろうね」という予想の範囲をなかなか超えてくれない。ただ、恋人と別れたときTwitterで「別れた」とあえてつぶやき、気になっている人に気づかせるというテクニックだけはためになった。機会があったら使わせてもらおう。
もともと技術畑の人というだけに「人」についての考察は少し軽薄という印象を覚えた。先述したようにマイナス面に触れてはいるものの、少し楽観的すぎるか。あと「あなたはリア充?」の質問に7割が手を挙げたという。どこのお菓子の国かと思えばSFC。スーパーファミコン、もとい慶応の湘南藤沢キャンパスじゃないか。ガラパゴスとはこの著者も揶揄しているが、このように特定の集団内の価値観を全体化してしまうのもネットの怖さではないだろうか。(I.Y)
(Amazon自レビューを転載)
つながり進化論―ネット世代はなぜリア充を求めるのか (中公新書)
- 作者: 小川克彦
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2011/03
- メディア: 単行本
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